相続税の基礎控除とは?計算方法をわかりやすく解説【札幌の弁護士監修】

「親が亡くなったけれど、相続税はかかるのだろうか?」「基礎控除という言葉は聞いたことがあるけれど、どう計算すればいいのかわからない」——そんな不安を抱えている方は少なくありません。
相続税には基礎控除という仕組みがあり、遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税は原則としてかかりません。つまり、基礎控除の計算方法を正しく理解することは、相続税の申告が必要かどうかを判断する第一歩です。
この記事では、相続税の基礎控除の仕組み・計算方法・注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。

瀨田法律事務所代表 瀨田督祥
(札幌弁護士会所属|登録番号 60164)
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除とは、相続した遺産の総額からあらかじめ差し引くことができる金額のことです。遺産総額がこの基礎控除額を超えない場合、相続税は課税されず、原則として申告も不要になります。
逆に言えば、遺産総額が基礎控除額を超えた場合にはじめて、超えた部分に対して相続税がかかります。「相続税がかかるかどうか」を判断するうえで、最初に確認すべき重要な数字です。
なお、本記事の内容は現行の法令に基づいていますが、法改正により内容が変わる可能性があります。
基礎控除額の計算式
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
この計算式は比較的シンプルですが、「法定相続人の数」をどのように数えるかに注意が必要です。
計算例:法定相続人が3人の場合
- 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
この場合、遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税は原則としてかかりません。
計算例:法定相続人が1人の場合
- 3,000万円 + 600万円 × 1人 = 3,600万円
法定相続人の数が多いほど基礎控除額が大きくなる仕組みです。
「法定相続人の数」の正しい数え方
基礎控除の計算において、「法定相続人の数」は単純に相続人の人数を数えるだけではなく、いくつかのルールがあります。
相続放棄した人も人数に含める
相続放棄をした人がいても、基礎控除を計算するうえでの「法定相続人の数」には含めます。相続放棄は税法上の人数カウントには影響しない点に注意が必要です。
養子は一定の人数までしか含められない
養子縁組をしている場合、法定相続人の数に算入できる養子の人数には上限があります。
- 被相続人に実子がいる場合:養子は1人まで
- 被相続人に実子がいない場合:養子は2人まで
この上限を超えた養子は、法定相続人の数に含めることができません。租税回避を防ぐためのルールです。
代襲相続人はそのまま人数に含める
子どもが被相続人より先に亡くなっていて、孫が代わりに相続する「代襲相続」のケースでは、代襲相続人もそのまま法定相続人の数に含めます。
遺産総額の計算にも注意が必要
基礎控除と比較する「遺産総額」の計算にもポイントがあります。単純に手元にある財産を足し合わせるだけではなく、以下の点を考慮する必要があります。
プラスの財産
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 有価証券(株式・投資信託など)
- 生命保険金(一部)
- 退職手当金(一部)
- その他の財産(車、貴金属、ゴルフ会員権など)
生命保険金・退職手当金の非課税枠
生命保険金や退職手当金には、それぞれ以下の非課税枠があります。
非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
受け取った金額のうち、この非課税枠を超えた部分が遺産総額に加算されます。
債務・葬式費用はマイナスできる
被相続人が残した借金や未払いの税金、また葬儀にかかった費用は、遺産総額から差し引くことができます。
相続開始前3〜7年以内の贈与財産
被相続人が亡くなる前の一定期間内に贈与された財産は、遺産総額に加算される場合があります。加算される期間は、贈与のタイミングによって異なります。個別の事案によって異なりますので、詳しくは弊所にご相談ください。
基礎控除を超えたら必ず申告が必要
遺産総額が基礎控除額を超えた場合、相続税の申告と納付が必要になります。申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
この期限を過ぎると、延滞税や加算税などのペナルティが生じる可能性があります。早めに準備を始めることが大切です。
また、配偶者の税額軽減(配偶者控除)や小規模宅地等の特例など、申告をすることで適用できる制度もあります。これらの制度を利用することで、相続税額が大きく変わる場合があります。ただし、これらの特例を適用するには申告が必要なため、たとえ相続税額がゼロになる見込みであっても申告を行う必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺産が基礎控除額以下なら、申告手続きは一切不要ですか?
原則として、遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告は不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、一部の特例を適用する場合は申告が必要になります。また、遺産総額の計算を誤って申告が漏れるケースもあるため、不安な場合は弊所にご相談ください。
Q2. 相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続人は何人ですか?
この場合、法定相続人は配偶者・子ども2人の合計3人となります。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円」となります。
Q3. 相続放棄した兄弟がいますが、法定相続人の数はどう数えますか?
相続税の基礎控除を計算する際の「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含めます。例えば、子どもが3人いてそのうち1人が相続放棄をした場合でも、法定相続人の数は3人として計算します。
Q4. 生命保険金は遺産総額に含まれますか?
被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人となっている死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があるため、その枠内であれば遺産総額への加算はありません。個別の契約内容によって異なりますので、詳しくは弊所にご相談ください。
Q5. 申告期限(10か月)を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
申告期限を過ぎた場合、延滞税(期限後の利息に相当するもの)や無申告加算税が課せられる可能性があります。ただし、期限後であっても申告・納付自体は可能です。
まとめ
相続税の基礎控除は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という計算式で求められます。遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、原則として相続税はかかりません。
ただし、法定相続人の人数の数え方・生命保険金の取り扱い・贈与財産の加算など、正確な計算には複数のルールが絡み合います。計算を誤ると申告漏れや過少申告につながる可能性もあるため、判断に迷う場合は弊所ヘご相談ください。
個別の事案によって状況は大きく異なりますので、ご自身のケースに当てはめて正確に判断することが大切です。
※ 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的なご相談については、弊所にお問い合わせください。
※ 記事内容は2026年6月現在の法令に基づいています。