相続放棄の手続きと期限|「3ヶ月以内」に何をすべきかを解説
親族が亡くなったとき、相続財産の中に借金が含まれていることが判明するケースは少なくありません。「どうすればこの借金を引き継がずに済むのか」「手続きには期限があると聞いたが、まだ間に合うのか」——そうした不安を抱えている方に向けて、この記事では相続放棄の手続きと期限について、基本的な仕組みから具体的な進め方までわかりやすく解説します。個別の事案によって状況は異なりますので、気になる点は早めに弁護士にご相談ください。

瀨田法律事務所代表 瀨田督祥
(札幌弁護士会所属|登録番号 60164)
相続放棄とは何か
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産も借金も含めた一切の権利・義務を引き継がないという意思表示を、家庭裁判所に申し立てる手続きです。
相続が発生すると、相続人はプラスの財産(預貯金・不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金・未払い税金・保証債務など)もあわせて引き継ぐことになります。相続放棄が認められると、その相続人は最初から相続人ではなかったものとして扱われるため、借金の返済義務を負わずに済みます。
ただし、相続放棄は「財産だけもらってマイナスだけ断る」という選択はできません。プラス・マイナスをすべて放棄することになる点は、しっかり理解しておきましょう。
相続放棄の期限:原則「3ヶ月以内」
熟慮期間とは
相続放棄には、原則として「自己のために相続が開始したことを知った時から3ヶ月以内」という期限があります。この期間を「熟慮期間」と呼びます。
「相続が開始したことを知った時」とは、多くの場合、被相続人(亡くなった方)が死亡した事実を知った日です。ただし、被相続人の死亡を後から知った場合や、自分が相続人であることを後から知った場合など、起算点の判断が難しいケースもあります。この点は個別の事案によって異なりますので、不明な場合は弁護士にご相談ください。
期限を過ぎるとどうなるか
3ヶ月の熟慮期間を過ぎると、原則として相続を承認したものとみなされます(「法定単純承認」)。その結果、被相続人の借金も含めてすべて相続することになるため、期限内に行動することが非常に重要です。
期限の延長(申述期間の伸長)は可能か
3ヶ月という期間は、家庭裁判所に申し立てることで伸長してもらえる場合があります。具体的には、相続財産の調査に時間がかかる場合や、他の相続人との関係で判断が難しい場合などが考えられます。
期限内に判断できそうにないと感じたら、期限が切れる前に家庭裁判所または弁護士に相談することが大切です。期限が過ぎてからでは原則として伸長が認められません。
相続放棄の手続きの流れ
ステップ1:相続財産・負債の調査
まず、被相続人がどのような財産・借金を持っているかを把握します。預貯金通帳・不動産登記・クレジットカード明細・消費者金融からの郵便物などを確認します。3ヶ月という期限が迫っている場合は、早急に着手することが重要です。
ステップ2:必要書類の収集
家庭裁判所への申立てには、以下のような書類が一般的に必要となります。なお、必要書類は個別の事案や申立て先の家庭裁判所によって異なる場合があります。
- 相続放棄申述書(家庭裁判所の書式を使用)
- 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
- 申立人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
- 被相続人と申立人の関係性を示す戸籍謄本(続柄に応じて異なります)
- 収入印紙(800円程度)および郵便切手
ステップ3:家庭裁判所への申立て
相続放棄の申立ては、被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に対して行います。郵送での申立ても可能です。
書類に不備がなければ、家庭裁判所から「照会書」が送付されてきます。これは「本当に相続放棄の意思があるか」を確認するための書面です。回答を返送することで手続きが進みます。
ステップ4:相続放棄申述受理通知書の受領
家庭裁判所が申立てを受理すると、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これをもって相続放棄の手続きは完了です。債権者から連絡が来た場合などには、この通知書のコピーを提示することで対応できます。
注意すべきポイント
相続財産に手をつけると放棄できなくなる場合がある
被相続人の財産を使用・処分するなど「相続の承認」とみなされる行為を行ってしまうと、その後に相続放棄の申立てをしても認められない場合があります。遺産の整理・処分などを行う際は、事前に弁護士に確認することをおすすめします。
次順位の相続人への影響
相続放棄をすると、相続の権利が次順位の相続人に移ります。たとえば、子どもが全員相続放棄をした場合、被相続人の親や兄弟姉妹が相続人となることがあります。自分だけでなく、親族全体への影響も考慮したうえで手続きを進めることが大切です。
期限後の相続放棄が認められる例外的なケース
原則として3ヶ月を過ぎると相続放棄はできませんが、「被相続人の死亡後3ヶ月以上経ってから借金の存在が判明した」など、一定の事情がある場合には、例外的に期限後の相続放棄が認められることもあります。諦めずにまず弁護士にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続放棄の3ヶ月の期限は、被相続人が亡くなった日から数えますか?
A. 必ずしも「死亡日」からではなく、「自己のために相続が開始したことを知った時」が起算点となります。死亡の事実を後から知った場合は、知った日が起算点となりますが、起算点の判断は個別の事案によって異なります。詳しくは弁護士にご相談ください。
Q2. 3ヶ月以内に手続きが完了しなくても大丈夫ですか?
A. 家庭裁判所への申立て自体が3ヶ月以内に行われていれば、申立て後の審理や受理通知の到達が3ヶ月を超えても問題ありません。大切なのは「期限内に申立てをすること」です。
Q3. 被相続人の借金がどのくらいあるか分からないうちに期限が来てしまいそうです。どうすればよいですか?
A. 家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申立てることで、調査のための時間を延ばしてもらえる場合があります。ただし、申立ては元の熟慮期間が切れる前に行う必要があります。早めに弁護士に相談し、適切な対応を検討してください。
Q4. 一度相続放棄をしたら取り消せますか?
A. 原則として、家庭裁判所に受理された相続放棄を後から撤回・取り消すことはできません。ただし、詐欺や脅迫によって相続放棄をさせられたなど、例外的に取消しが認められるケースもあります。安易に判断せず、事前に十分な検討を行うことが重要です。
Q5. 相続放棄の手続きは自分でできますか?
A. 書類の準備・収集から申立てまで、ご自身で行うことは制度上可能です。ただし、必要書類の収集が複雑な場合・期限が迫っている場合・他の相続人との調整が必要な場合などは、弁護士に依頼することでスムーズに手続きを進められることがあります。
まとめ
相続放棄の手続きには、原則として「相続が開始したことを知った時から3ヶ月以内」という期限があります。この期間を過ぎると、原則として相続を承認したとみなされ、被相続人の借金も含めて引き継ぐことになります。
大切なのは早めに動くことです。被相続人が亡くなったことを知ったら、まず財産・負債の調査を始め、相続放棄を検討する場合は期限内に手続きを完了させることを念頭に置いてください。また、期限が過ぎた後でも、事情によっては例外的に対応できるケースがありますので、諦めずに相談することをおすすめします。
なお、本記事は2025年時点の法令に基づいて作成していますが、法改正により内容が変わる可能性があります。最新情報は弁護士にご確認ください。
相続放棄についてお悩みの方へ
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相続放棄の手続きは、状況によって対応が大きく異なります。個別の事情を丁寧に伺いながら、最善の対応をともに考えます。まずはお気軽にご連絡ください。
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別事案に対する法的アドバイスを行うものではありません。具体的なお悩みについては、弁護士にご相談ください。
なお、法改正等により内容が変更される可能性がありますので、最新情報は公的機関・弁護士へご確認ください。
